SEISA DOHTO UNIVERSITY

美術学部 デザイン学科

2024.06.04 フィレンツェ通信 4
美術学部 デザイン学科



 フィレンツェ通信 4 

今春、本学デザイン学科を卒業後、現在フィレンツェに留学中の杉山花菜さんからのおたよりを紹介しており、今回はその4回目のものです。

フィレンツェは気温が25度近い日も多くなり、ジェラートが美味しい季節になってきました。ソフトクリームやシャーベットとはまた違う美味しさがあり、日本ではなじみのないフレーバーを試すのが楽しみとなっています。そういえばソフトクリームは殆ど見かけません。

さて、先日はサン?マルコ修道院にありますサン?マルコ美術館にて、フラ?アンジェリコの受胎告知を見てきました。一般の方でも一度は教科書などで見たことはあるかと思う超有名作品ですね。



正直あまり興味はそそられていなかったのですが、せっかく見られる場所にいるのだからと、あまり期待をせずに美術館に向かいました。しかし直接作品を目にすると素朴で軽やかな色彩と静かな神聖さに絵の前から立ち去るのが惜しくなる程感動してしまいました。

フィレンツェに来てから、名前は知ってるが実物は見たことがなくあまり興味が引かれていなかった作品を実際に見て、考えが180度変わってしまうことが何度も起きています。本当に自分の目で直接見ることの大切さを痛感する日々です。

そしてサン?マルコ美術館から徒歩1分の近場にあまり知られていないフレスコ画の展示施設があります。スカルツォの回廊と言います。ここにはルネサンス期の後半にフィレンツェで活躍したアンドレア?デル?サルトという芸術家のモノクロのフレスコ画が残っています。
カラーで描くのが主流のフレスコ画ですが、珍しいことにこの回廊は敢えてすべての絵をモノクロで仕上げたそうです。
私はこの回廊に行くまでアンドレア?デル?サルトという芸術家は知らず、お勧めをされたからついでにという軽い気持ちでこの回廊に立ち寄りました。



結果、共に訪れた留学仲間と「上手い…すごい…なんだこれ…」とひたすら呻くことになるほど衝撃を受けました。こんなに素晴らしいフレスコ画がどうして有名にならずひっそりと展示されているのか本当に不思議です。 

すっかり驚いて絵の美しさに惚れた私は滞在先に帰ってからこの芸術家について調べました。そうするとフィレンツェ市内に彼が描いた最後の晩餐のフレスコ画が展示されている美術館があると知りました。これは是が非でも見たいと2日後に滞在しているレジデンスから1時間ちょっと歩いてその美術館を訪れました。



こちらもやはり、見れば見るほど色彩や濃淡の駆け引きが巧みで、絵の前にいるとあっという間に時間が溶けて消えてしまいました。写真ではなかなか伝わらないことが悔しいところです。デッサンも少数展示されていました。表情がとても人間らしくて引きこまれます。



名作と呼ばれる作品はどれも画面構成、色彩、濃淡、モチーフ選び、他にもたくさんのことを本当によく考え抜かれたうえで描かれていると感じます。
深い知識と訓練された技術によって作り上げられた作品たちの前で、自分の未熟さを思い知るばかりです。この名作たちから少しでも多く学びを得て自分の糧にしていきたいと強く感じました。