SEISA DOHTO UNIVERSITY

美術学部 デザイン学科

2024.06.14 フィレンツェ通信 5
美術学部 デザイン学科



フィレンツェ通信 5 

フィレンツェ留学中の杉山花菜さんから届けられた第5信です。ミラノで出会ったレオナルド?ダ?ヴィンチの作品についての記事をご紹介します。

フィレンツェ滞在期間3カ月のうち半分が過ぎました。
だいぶイタリアの生活にも慣れ、電車やバスでフィレンツェの外まで出かけることも多くなり街ごとの景色の違いを楽しんだりしています。
そして先日ミラノへ行ってきました。


フィレンツェからは新幹線で約2時間程ですが今回は夜行バスでの移動。

夜中の2:20にフィレンツェを出発したバスは途中工事渋滞に巻き込まれ到着予定時刻より2時間半ほど遅れてミラノに到着。
予定通りであれば朝一番でミラノの大聖堂(ドュオモ)の見学をしようと考えていましたが、時間が無くなってしまったのでそちらはスキップし近くのアンブロジアーナ絵画館へ向かいました。小ぶりで素朴な絵画館ですが展示品はカラバッジョの果物籠、バチカン美術館ラファエロの間のフレスコ画であるアテネの学堂の下絵、レオナルド?ダ?ヴィンチの音楽家の青年など見応えのある作品が展示されています。お客さんも少なかったのでじっくりと眺めることができました。


さて、今回のミラノ訪問の大きな目的はレオナルド?ダ?ヴィンチの最後の晩餐を見ることです。この作品があるのはサンタ?マリア?デッレ?グラツィエ教会に隣接する修道院の食堂の壁です。この修道院、第二次世界大戦で空爆によりほぼ全壊、食堂も屋根が崩れ落ちましたが奇跡的に壁画のあった壁は倒壊を免れ3年もの間、風雨に野ざらしにされながらも完全に崩れることはありませんでした。その後
1977年から20年以上にわたる修復作業を経て描かれた当時に近い姿がよみがえり今に至ります。
さてそんな最後の晩餐を見ることは容易ではありません。観光大国のイタリアは世界中から観光客が訪れ人気の美術館などは予約無しでは入館できないことがままあります。この最後の晩餐も勿論予約必須。4月あたまに予約サイトを確認した時点で6月末まで予約は埋まっている状況。なんとか掴み取った最後の1枠がこの日でした。


予約時間の30分前に予約メールとパスポートを受付で見せて本チケットに交換してもらいます。写真に写っているのは入館証のみですがここに名前が印字されたチケットを差し込んで入館します。決められた時間に35人ずつしか入館できず、必ずガイドが付き添い解説を受けながら館内を進んでいきます。


そして、ついにレオナルド?ダ?ヴィンチの最後の晩餐にたどりつきます。

かつては壁の両側の窓から自然光を取り込んでいたという食堂も再建の際に窓を減らし空調完備万全の建物になったそうです。作品の保全の為1回の鑑賞時間は15分と厳しく制限されています。入室したらまずは作品の記念撮影。薄暗い空間に浮かびあがる最後の晩餐はとても美しいです。
聖人やイエスの頭部には金の輪を描くことでその人物たちが特別な人々であることを示していた時代ですが、この最後の晩餐のイエスには金の輪は描かれていません。代わりに窓からの風景によってイエスに自然と目がいきます。そして、裏切り者のユダも一見では分からないように描かれています。それまでに描かれてきた最後の晩餐では誰が裏切り者なのか分かりやすく描かれたものが多く、それは食事の場としては少し不自然な配置になっていました。しかしレオナルド?ダ?ヴィンチの最後の晩餐ではユダも他の使徒たちに混ざり異物感はありません。数ある最後の晩餐のなかで何故レオナルド?ダ?ヴィンチの最後の晩餐ばかりが飛びぬけて評価され有名であるかは多くの理由があるのですが、ここではそれは割愛します。ただ、実物を目にするとやはりレオナルド?ダ?ヴィンチがこの作品にしかけた様々な計算と表現のトリックに取り込まれ感心させられるばかりでした。
15
分はあっという間に過ぎてしまい、名残惜しみながらの退室です。
本来はこれで鑑賞は終わるのですが私が取ったチケットはここからVRを使ったワークショップも込みのものでしたので別室に移動します。
内容はレオナルド?ダ?ヴィンチが生きていた時代のミラノ(約500年前)をVRで体験しながら当時と今の景観の違い、レオナルド?ダ?ヴィンチが書き残した地図や建物のスケッチをもとにVRで再現された建築物を見学するといったものでした。スケッチされた建物はもう現在では残っていないものがほとんどでしたが街の大きな作りは現在の地図と一致していて、石造りの街並みの堅牢さを思い知りました。
1時間半ほどの訪問を終えて、また歩いてドュオモの広場まで戻った後はミラノの街を散策しながらのんびりと中央駅に向かいます。フィレンツェ、ローマは歴史の重さを感じる街並みですが、ミラノはイタリアのなかでも現代的な建物も多く新旧が入り混じる景観は見ていてとても興味深かったです。
そんな中でレトロな路面電車が走っているのも味わい深いです。
帰りは定刻通りに出発した電車に感動しながらIC3時間半ほどかけてフィレンツェに帰ってきました。電車の遅延にすっかり慣れた今日この頃です。