SEISA DOHTO UNIVERSITY

美術学部 デザイン学科

2024.06.22 フィレンツェ通信 6
美術学部 デザイン学科




フィレンツェ通信 6


フィレンツェに留学中の杉山花菜さんからの第6信、ベルギーのフランドル美術についてのお便りです。

先日ベルギーへ34日の旅行に行ってきました。
目的はフランドル絵画を見るためです。フランドル絵画とはイタリアの初期?盛期ルネサンスとほぼ同じ時期にネーデルラント(現在のベルギー、オランダ、ルクセンブルク、さらにフランス北部、ドイツ西部あたりまでを含む地域)で発達した様式です。緻密な描写が特徴のひとつです。この時代に活躍したヤン?ファン?エイクが油彩技法を確立しました。つまり油彩の始祖であり最高峰の作家の作品をその様式が生まれた土地で直接見ることが出来るのがベルギーなのです。
すでに気温30度にのぼる日もあり強い乾燥と暑さで夏を感じるフィレンツェとは違い、ベルギーのブリュッセルは早朝であればまだ息も白く肌寒い気温で湿気も感じます。北海道のゴールデンウィーク頃の気候に近いかもしれません。


さて、イタリアのローマ?フィウミチーノ空港から約2時間ほどでブリュッセル国際空港に到着します。そこから鉄道でブリュッセル中央駅に向かい、下車しますと早速街の中を散策。駅近くは現代的な建物が建っていますが少し歩くと歴史的な建物が残っており迫力のある荘厳な街並みを歩くことができます。屋根は高く突き出た鋭利な形が多く面白いです。ベルギーの公用語はオランダ語、フランス語、ドイツ語と複数あるので店員によって話される言葉も違うところが日本では経験できないことですね。初日は移動とちょっとした散策で明日に備え早めに就寝しました。


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日目は今回の旅の一番の目的、聖バーフ大聖堂の祭壇画「神秘の子羊」を見にゲントに向かいます。電車を乗り間違えて少し遠回りをしましたが何とかゲントにたどり着きドキドキしながらチケットを買って大聖堂の中を歩いていくと一番奥に展示されていました。2012年から大掛かりな修復作業に入っていたエイク兄弟の「神秘の子羊」は修復個所を取り外して一部部分だけが展示されている状態が続いていましたが2020年に修復が完了し現在は完全な姿で見ることができます。この祭壇画は観音開きになっているので表と内側の両面に絵が描かれています。私が入場した時は祭壇画は閉じていたのでまずは表をじっくりと鑑賞し、そのまま30分程待っていると自動で祭壇画が開き内側を鑑賞できました。
油絵具の透明な色合いを利用し複雑に絡み合わせた色彩は深く神秘的でとても美しかったです。画面は綿密に構成されすべてが緻密に描写されていますが奥行きや立体感に違和感はなく、すさまじい技量の高さが感じられます。油彩の始祖であり最高峰である作品の迫力は素晴らしく、長い時間見入ってしまいました。


午後にはブリュッセルに戻り今度はベルギー王立美術館に向かいます。ここには初期フランドル派からはじまり、16世紀の民衆風俗を描いたリューゲル、フランダースの犬でおなじみのルーベンスやそのほか17世紀の巨匠の作品が展示されています。また同じ施設内にはルネ?マグリット美術館もあり古典から近代までの作品を楽しむことができます。マグリットは街中や空港にマグリットショップというお土産屋さんもあり人気の高さがうかがえました。


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日目、この日はブリュージュという街に行きました。
この街にもヤン?ファン?エイクの作品があります。グルーニング美術館に入ってすぐにお目当ての『ファン?デル?パーレの聖母子』が展示されていました。ガラスで仕切られ少し離れた位置からしか鑑賞できなかった神秘の子羊と違いこちらは間近に作品が鑑賞でき、緻密な描写をじっくりと観察することができました。近づいて見てもひたすらに美しいです。


ブリュージュは街の中をいくつも川が走り川面にせり出すように建物が建っています。古い景観が残された街並みは絵画の世界に入り込んだようでどこを見ても絵になる景色ばかりで散策もとても楽しかったです。観光客は多いですがそれでもゆっくりとした時間が流れ、そのなかで食べる焼き立てのワッフルはとても美味しかったです。





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日目は昼にはローマに戻る便を取っていたので朝早くにホステルをチェックアウトして朝ごはんに滞在中に気に入ったベルギーのベーカリーチェーン店のバゲットを食べてからイタリアへ帰りました。
私は今回のフィレンツェ滞在が初めての海外渡航だったのでイタリア以外の国へ行ったのはベルギーが初めてでした。日本と海外の違いに驚くことも多いですが、イタリアとベルギーを見比べても様々な発見がありとても豊かな経験ができたと思います。


フィレンツェに滞在できるのもあと3週間です。
思い残しのないように残りの期間を過ごしていきたいです。